言葉の壁を超えて意味を伝えることができる“矢印のデザイン”を、平常時も楽しめるアート作品として区内の必要な場所に設置することで、国内外の来街者に一時退避場所の場所を認知してもらい、発災時の誘導を支援する取り組みです。
ストリートの自由な空気感を損なわないことを意識しました


本プロジェクトでも、エッジが効いたコラージュアートを展開するのは小町渉さん。参加理由は「“渋谷の街中にある壁面”というキャンバスに魅力を感じました」と言う通り、その作品は実際にJRの高架下で見ることができます。
「通常の作品制作と違い、このプロジェクトは『避難場所への誘導』という伝えるべきことがハッキリしているため、スムーズに進行することができました」と、作品自体は迷いなくイメージできたそうですが、実際に描くときは“街中の壁面”いう特殊なキャンバスならではの苦労もあったとも言います。
「作品はスプレー缶で描きましたが、高架下を行き交う歩行者の方々に、スプレーの匂いや飛沫が飛ぶことを避けるため、スタッフの方に歩行者が壁面前を通行するタイミングで、声掛けをお願いしていました。その度に作業を中断するのですが、これが通勤の時間帯になると、なかなか作業が進まない(笑)。それでも、普段の1人での制作とは異なり、チームプレーで制作しているという実感もあり、とてもよい経験になったと思っています」
そうして誕生した作品は、サブカルチャーの拠点でもある渋谷の街に見事にマッチ。20代の頃にはパンクバンドを組み、渋谷はメンバーとよく訪れていた小町さんだからこその作品です。
「もちろん許可を得た上で壁面に描いているわけですが、街中にあるグラフィティ(イリーガルな壁面アート)のように、ストリートの自由な空気感を損なわないことを意識しました。なるべく作品が街の雰囲気に溶け込むように」
そんな小町さんは、コラージュ作品のシリーズ《Story of Legendary Muscle Man (伝説のキン肉マンの生涯)》の制作も進行中とのこと。リモート展示を予定しているというその新作を観ることで、小町さんも魅力を感じた「渋谷の街中にある壁面」ならではの空気感や技法の違いがさらに楽しめそうです。
