言葉の壁を超えて意味を伝えることができる“矢印のデザイン”を、平常時も楽しめるアート作品として区内の必要な場所に設置することで、国内外の来街者に一時退避場所の場所を認知してもらい、発災時の誘導を支援する取り組みです。
街中の壁画に作品を描くのは、普段の自分の手法とまったく違いました
伊藤さん曰く、2人の作品が「DJが曲をミックスするような感じで移っていく」というイメージが暗黙のうちにできていたとか。
その言葉通り、両者の作風は全く違うテイストながら、“矢印”をテーマにした巨大壁画の中で、さりげなく融合しています。
「このプロジェクトに参加したきっかけは、企画者の桑原茂一さんと、コラボ相手の伊藤桂司さんにお声掛けをいただいたことです。とても重要なプロジェクトだと思ったので、参加を決めました」
しかし、作品を見ればわかる通り、河村さんが最も得意とするコラージュは、今回は封印しています。

「街中にある巨大な壁面という特殊性からコラージュが使えず、実際に制作は普段の自分の手法と全く違いました。実はそこが本当に大変で……。それでも矢印をどれだけ目立たせるか、ということは最も意識した部分。全体的に矢印を多く使用したのは『避難場所への誘導』というこの企画のコンセプトが影響しています」
河村さんは、この作品が描かれているJR高架下、さらには渋谷の街を「すべての交差点的な場所」と言います。
様々な文化や情報が混在し、人種や国籍を問わず多くの人々が行き交う場所だからこそ、このプロジェクトの役割も大きくなりますが、壁面という巨大キャンバスも醍醐味です。渋谷を訪れた際は、ぜひ実際に、河村さんと伊藤さんのコラボレーションによる“矢印”の前に立ってみてください。
