渋谷アロープロジェクト

INTERVIEW

『シブヤ・アロープロジェクト』参加アーティスト インタビュー

矢印の先にある“安全な場所”を動物と花で伝えたい

伊藤桂司

矢印をモチーフにしたアート作品が、渋谷キャスト前や、JRの高架下など渋谷の街中に、出現中です。これらは、『シブヤ・アロープロジェクト』によるパブリックアートで、矢印(アロー)が示すのは、地震などの大きな災害が起きた時に退避できる安全な場所“一時退避場所”の位置です。

言葉の壁を超えて意味を伝えることができる“矢印のデザイン”を、平常時も楽しめるアート作品として区内の必要な場所に設置することで、国内外の来街者に一時退避場所の場所を認知してもらい、発災時の誘導を支援する取り組みです。

アニメーションのように、矢印をインプットできたらいいなと

矢印の方向へ向かって一列になって進む動物たちと、それをアシストする花々。JR高架下の作品群のなかでも特に、小さな子どもでも思わず笑顔になりそうな作品を展開するのは伊藤桂司さんです。今までに何度もコラボレートしてきた盟友、河村康輔さんとのタッグで『シブヤ・アロープロジェクト』に参加しています。

「河村くんとは、プライベートでも親交があってメンタル面も共通してる部分があるから、今回のコラボも迷いはありませんでした。一応、壁面を2人でやると決めましたけど、エリアを分けるのではなく、いつの間にか僕の作品から河村くんの作品に……それこそ、DJが曲をミックスするような感じで移っていく。そんなイメージが暗黙のうちにできていました」

伊藤桂司さん、河村康輔さん

そうして完成した作品は前述した通り、かわいい動物や花たちが登場します。伊藤さんが作る広告やグラフィックの作品を知る人にとっては、少し意外なタッチかもしれません。しかし、それにも理由があるようです。

「緊急時にパニックにさせないで誘導するために、この矢印の先にある『安全な場所』のニュアンスを動物モチーフに込めました。動物は災害を察知して人間より先に避難することがよくありますよね。

さらに視認性という意味では、ミニマルなコミュニケーションも重視しました。だから矢印も動物も線画にして……。実は、日頃のコラージュ作品とは別で描いているシリーズがあるんですよ。雑誌『MilK MAGAZINE』や、子どものための塗り絵なんですけど、昔からそうやって描いてきた動物たちに、今回一緒に参加してもらったという感じでしょうか(笑)」

伊藤さんの知る人ぞ知る一面が表に出た壁画ですが、街中にある壁という特性を捉えた緻密な計算も、しっかりと反映されているようです。

「壁画というメディアに落とし込むと考えたら、描くべきなのは額縁に入れるような絵ではないな、と最初に思いました。空間も取り込んで一体化できる作品が必要かなと。それで矢印の長さも結構考えたんですよ。端から端まで1本の矢印だと意味をなさないし、短すぎても忙しない。何度も歩いて、歩幅と目で追った時のリズム感を確認しました。アニメーションのように、矢印をインプットできたらいいなと思って。そこから個数やサイズをなんとなく決め、バランスを押さえるところから描き始めました」

実際にJR高架下を歩けば、伊藤さんが伝えたかったことがわかるはず。“矢印”が心地よく視界に入り、きっと自然とその方向へ足を進めたくなります。


伊藤桂司

958年東京都生まれ。UFG(Unidentified Flying Graphics)Inc. 代表。京都造形芸術大学客員教授。2001年東京ADC賞受賞。個展のみならず、国内外の展覧会にも多数参加。最新刊『LA SUPER GRANDE』(ERECT LAB. )広告、書籍、音楽関係のアートディレクション、グラフィックワーク、映像等を中心に幅広く活動する。
http://site-ufg.com