言葉の壁を超えて意味を伝えることができる“矢印のデザイン”を、平常時も楽しめるアート作品として区内の必要な場所に設置することで、国内外の来街者に一時退避場所の場所を認知してもらい、発災時の誘導を支援する取り組みです。
渋谷は10代の頃から訪れている、自分の原点の街


そうした“矢印”を「未来と安全を示すサイン」と、独自の解釈で再構築するのは、ビジュアルアーティストのミック・イタヤさん。東京スカイツリー ソラマチの壁画が有名ですが、今回のプロジェクトでも新しい壁画アートを完成させました。
JRの高架下で見ることができるその作品は、同じ色調ながら異なるモチーフで描かれた2枚の壁画で、それぞれ《春の矢印》《夏の矢印》と命名されています。ちなみ、まだ未発表ですが《秋の矢印》《冬の矢印》もあるとか……。数多くの作品を残しているミック・イタヤさんですが、今回の作品も普段の制作の延長にあると言います。
「このプロジェクトに参加した理由は、都市生活者と訪問者にとって大切なサインだと感じたからです。そのため、街の中の永遠性を考えました。ただし、矢印の向き以外は普段の作品と異なる点はありません」
「普段の制作は1人なので、同じ目的を持つアーティストとの繋がりが生まれたことが楽しかったですね。それに渋谷は、10代の頃から訪れている街。ミユージック、ファッション、デザイン、アートと、自分の原点の街でもあります」
若い頃から通い、自分のルーツとまで言いきる渋谷の街に残した壁画は、どこか神話の世界を感じさせる作品ですが、それはミック・イタヤさんが現在、個人的に進行しているプロジェクトにも関係しているそうです。
「最近は『新しい神話』をテーマにした作品を描き続けています。美の街と暮らしを生むのが目下の仕事。もちろん、作品を発表する予定もありますが、まだ不確定の要素が大きいので、決まり次第改めてお知らせしたいと思います」
もしかすると次の展覧会では、未発表作品の《秋の矢印》《冬の矢印》を、観ることができるかもしれません。その際は渋谷の街も訪れ、JRの高架下に壁面に並ぶ《春の矢印》と《夏の矢印》と見比べてみてください。

