渋谷アロープロジェクト

INTERVIEW

『シブヤ・アロープロジェクト』参加アーティスト インタビュー

この絵が誰かの日常になったら凄く素敵ですよね

しりあがり寿

矢印をモチーフにしたアート作品が、渋谷キャスト前や、JRの高架下など渋谷の街中に、出現中です。これらは、『シブヤ・アロープロジェクト』によるパブリックアートで、矢印(アロー)が示すのは、地震などの大きな災害が起きた時に退避できる安全な場所“一時退避場所”の位置です。

言葉の壁を超えて意味を伝えることができる“矢印のデザイン”を、平常時も楽しめるアート作品として区内の必要な場所に設置することで、国内外の来街者に一時退避場所の場所を認知してもらい、発災時の誘導を支援する取り組みです。

描き直しができない、大きな絵を描くのは気持ちがいい

様々な展覧会や映像作品に参加する漫画家のしりあがり寿さんも、このプロジェクトを盛り上げている1人。JRの高架下の壁面には、お馴染みのタッチで描かれたキャラクターたちが、避難場所を示す矢印を手にする姿を見ることができます。しかし、その作品の主役はキャラクターたちではなく、あくまで“矢印”と言います。

「ちゃんと矢印が伝わるように、意図が伝わるように、ということを意識しました。とにかく主人公は矢印なので、その矢印の向きが、記憶の中でいつでも浮かび上がるといいなと思って」

漫画の枠を超え、様々なカタチで作品を発表してきたしりあがり寿さんですが、意外にも今まで壁面に描いたことはなかったとのこと。

「もの凄く大きな紙に描いたことはあったけど、壁は初めてかもしれません。しかも街中にある壁だから通行人もいる。それだけに気持ちも張りましたね。やっぱりちょっとカッコつけて、上手く描こうとしちゃう(笑)」

そして街中にある壁面に絵を描くのは、特別な楽しさがあったそうです。

「大きな絵を描くのはなんでも楽しいけど、今回も高架下という場所や作業に使える期間を考慮すると、わざわざ道路を渡って、反対側から途中の出来栄えをじっくり見て、戻って直して……なんてやっていられない。構図は考えてあっても、描くのは行き当たりばったりなんです。でも実はそれは『失敗』がないってこと。だから大きな絵を描くのは気持ちがいいですよ。時間を無尽蔵に使って描き直したものがいいとは限らないですしね」

しかも作品を描いた高架下は、自身にとっても馴染み深い場所。その思いも込めて語ってくれました。

「僕は40年くらい原宿・渋谷界隈に仕事場があるけど、渋谷の街並みもどんどん変わっていますよね。でも絵を描いた高架下あたりは、昔からずっと変わっていない。いつも通っていた道だけど、自分の絵があることで、さらに愛着がわく場所になりました。高架下と一緒に、この絵も変わらずにずっと残っていったり、他の誰かの日常になったりしたら、凄く素敵ですよね」


しりあがり寿

1958年静岡市生まれ。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後キリンビール株式会社に入社し、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年単行本『エレキな春』で漫画家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表、新聞の風刺4コママンガから長編ストーリーマンガ、アンダーグラウンドマンガなど様々なジャンルで独自な活動を続ける一方、近年では映像、アートなどマンガ以外の多方面に創作の幅を広げている。
http://www.saruhage.com